たそがれのカツドウヤ 5「アリヨリさん、わたしが説明するわね」「そうしてくれ」 ホリウリは、受注の流れをひとつひとつ説明してくれた。 流れはこうだ。ホストコンピュータは、親会社の電算室。そこから専用線を引っ張ってきている。そして、受注した商品、その発送先を入力すると、自動的に大塚の倉庫の端末が、納品書とかも一緒になった伝票が出て、それをみて、商品を段ボールにつめ、発送する。 いまは、そんなもん、驚くに値しないが、この会社は、外資系のコンピュータ会社のビジネス機をつかい、専用線をはり巡らし、売上げの数字も即時につかめるような、システムを構築していたのだ。 これには確かに驚いた。インターネットも存在しない時代だ。リクルート事件のとき、江副さんが。回線リセールとかいってたのは、この何年もあとのこと。データをとおす専用線なんてとても高価な買物だったのだ。 むろん、このビデオ子会社を上場させて、一儲けをたくらんだのだろうが、そして、その話はなんどとなく、だれとなく聞かされたが、時間がたてばたつほど、それが絵空事以外のなにものでもないことがよくわかった。 この専用線の投資も、その一環だろうが、結論からいえば、その投資額を回収することなく終わったことになる。 「うえ、」 ウエシマという女性がひたすら端末を打っていた。ブラインドタッチでけっこう手の動きは早い。 しかし、ふりむいた雰囲気は、キーボード裁きとは、正反対の雰囲気をただよわせていた。 三人ともキーボードははじめて。デスクにもパソコンはない。第一、電気メーカーの本社のデスクに黒電話。一課に1台オフコンだった時代だ。 大学でもコンピュータの講座はあった。しかし、文科系には縁のうすい、C言語だとか、コボルといった内容で、どうそれが自分に役にたつのかわからないものだった。 ウインドウズなんて、どの時代の話、ってかんじだった。 「おい、新人諸君、これわたしとくよ」 アリヨリから手渡されたのは、マッチ箱大の箱。裏側には名前のうちこまれたダイモテープがはりつけてあった。 営業マン必須アイテム、ポケベルだった。 |